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711 囲碁の精
囲碁の精は精霊の一種です。
これは囲碁好きな者のもとに現れるといわれ、江戸時代中期、林義端著『玉箒子』に次のような話があります。
その昔。
江戸の牛込に昨庵という者が住んでいました。
あるとき。
昨庵が円照寺付近を散歩していると、色白と色黒の二人組の男が話しかけてきました。
この二人となじみとなった昨庵が名を尋ねると、色黒の者は山に住む「知玄」、色白の者は海辺に住む「知白」、自分たちは「囲碁の精」だと名乗りました。
それならばと、囲碁を趣味とする昨庵が教えを願うと、なぜか二人は姿を消してしまいました。
知玄と知白の二人。
あのとき消えたままで、イゴのことはわかっていないといいます。
・イゴ=囲碁=以後
・林義端(はやしぎたん・生年未詳~1711・儒学者、小説家)
・『玉箒子』(たまははき・浮世草子・1696年刊)