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71 静か餅
静か餅は音の怪異の一種です。
栃木県芳賀郡益子町に伝承があり、これは夜中に遠方から「コツコツ」と、餅の粉をはたくような音が聞こえてきたといいます。
この音が近づいてくれば「餅の中につき込まれる」といって、それは運が向く兆しであり、このとき蓑を後ろ手に差し出すと財産が入ってきたといいます。
反対に音が遠ざかれば「餅の中からつき出される」といって、運が衰える兆しとされました。
この現象は「隠れ里の米つき」ともいわれ、この音を聞いた者は長者になれたといいます。
ただ残念なことに、この音は誰もが聞こえるわけではなく、ほとんどの人の耳には届かなかったといわれています。
この静か餅。
絵に描いた餅でした。
・絵に描いた餅=本物でなければ何の値打ちもないこと
・蓑=植物を編んで作られた雨具




