709/916
709 踊り首
踊り首という妖怪がおります。
踊り首は首だけが踊るように宙を舞う妖怪で、怨念や愛憎の強い者の首が、死んだ後に胴体から離れて巨大化し、そして古びた寺などに現れて、訪れた者たちを脅かしたといわれています。
これは江戸時代後期、速水春暁斎の『絵本小夜時雨』に「平川采女異蛇を斬」と題し、次のような話があります。
永禄年間の頃。
現滋賀県の江州で、ある者が馬の頭を持つ大蛇の妖怪を退治したところ、馬の首だけが空へ飛んでいったといいます。
この馬の頭を持つ大蛇。
速水春暁斎の図画を見るかぎり、この大蛇の首は馬というより、どちらかといえばよく見るところの龍のものに似ています。
ウマく描いてくれていれば……。
・ウマく=馬に=うまく
・永禄年間=1558~1570年
・速水春暁斎(はやみしゅんぎょうさい・1767~1823・浮世絵師、読本作者)
・『絵本小夜時雨』(えほんさよしぐれ・絵本読本)