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7 豆腐小僧
豆腐小僧という妖怪がおります。
江戸時代の草双紙、黄表紙、怪談本など、豆腐小僧は多くの場で登場し、見かけは子供で、頭に竹笠をかぶり、豆腐を載せた丸盆を持って歩く姿で描かれています。
ある晩。
豆腐小僧は江戸の街中を歩いていました。
この夜のお盆の上の豆腐は、一丁の半分ほどの大きさでした。
豆腐小僧としてはまだ半人前でしたので、一丁そのままだとまだお盆から落としてしまうのです。
お盆の上で豆腐がぷよぷよと揺れます。
お盆が斜めになりますと、豆腐が滑って危うく落ちそうになります。
豆腐はこれからの修行で徐々に大きくしていきます。
この豆腐小僧。
豆腐の大きさが一丁近くになりますと、豆腐小僧として一丁前になりました。
・一丁近く=一丁前=一人前
・一人前=自立した人、独り立ちした人