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698 白粉婆
白粉婆という妖怪がおります。
奈良県吉野郡十津川流域に伝承があり、白粉婆は老婆の化け物で、ジャラジャラと鏡を引きずって歩くといわれています。
顔一面に白粉を塗りたくっているのですが、この塗り方が真っ白のうえに雑で、その顔は見るだけで恐怖を覚えるといいます。
江戸時代中期、鳥山石燕の妖怪画集『今昔百鬼拾遺』では、雪景色の中、腰の曲がった老婆が大きな破れ傘をかぶり、左手に徳利を持ち、右手に杖をついて歩く姿が描かれています。
石燕はその解説文で、「白粉婆が脂粉仙娘という白粉の神に仕えている侍女である」と述べています。
この白粉婆。
鏡で己の顔を見るたびにシラけていました。
・シラけて=塗り方が真っ白
・シラけて=興がさめて気まずい雰囲気になる
・徳利(とくり、とっくり・日本酒などを入れて注ぐための首が細く下部が膨らんだ容器)
・鳥山石燕(とりやませきえん・1712~1788・画家)
・『今昔百鬼拾遺』(こんじゃくひゃっきしゅうい)