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696 小夜の中山
小夜の中山は江戸時代後期、曲亭馬琴の『石言遺響』次のような話があります。
その昔。
お石という身重の女が小夜の中山峠で陣痛に苦しんでいると、そこに轟業右衛門という男が通りかかりました。
業右衛門はお石が金を持っていることを知ると、斬り殺して金を奪って逃げました。
その晩。
お石の霊がそばにあった丸い石に乗り移り、その石が夜毎に泣くようになったといいます。
この夜泣き石。
現在は国道1号小夜の中山トンネルの東京川の道路脇にあるのですが、東京で見せ物にする興行が失敗したおり、一時的に焼津に置き去りにされていたことがありました。
その間。
夜泣き石は泣きませんでした。
情けなくて泣くに泣けなかったのだといいます。
・泣くに泣けない=泣いても気持ちがおさまらないほど悔しいこと、あるいは残念なこと。
・曲亭馬琴(きょくていばきん・1767~1848・読本作者)
・『石言遺響』(せきげんいきょう・読本)
 




