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690 濡女子
濡女子という妖怪がおります。
これは九州や四国に伝承があり、地方によって「雨の降る夜に全身が濡れて現れる」「海や沼からずぶ濡れの姿で現れる」「着物がびっしょり濡れている」など様々ですが、どの地方も濡れているという点は共通しており、これは無実の罪で死んでいった女の怨霊だといわれています。
濡女子は微笑かけてきて、無視すれば何もしませんが、笑い返した者にはつきまとい、相手が死ぬまで離れませんでした。
某男は笑い返したばかりに、この濡女子につきまとわれることになりました。
この夜も濡女子が現れます。
「うん?」
男は首をかしげました。
なぜか濡女子の着物が濡れていません。
ヌレギヌが晴れたのでした。
・ヌレギヌ=着物が濡れて
・濡れ衣=身に覚えのない罪