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68 馬の足
馬の足は夜道で遭遇する怪異です。
江戸時代後期の岩国藩士、広瀬喜尚の怪談集『岩邑怪談録』に次のような話があります。
ある雨の日の夜。
安達何某氏の屋敷の生垣から馬の足が突き出すという怪異が起き、安達氏が生垣を調べるが、その正体はまったくわかりませんでした。
それ以来。
雨の日の夜になると、馬の足に蹴られたという者が続出するようになりました。
安達氏は化け物の正体を突き止めるべく、剣術に優れた男を雇い、それからは雨の日になるとこの男が生垣を見張りました。
ある雨の晩。
男が化け物を捕えたという報告を受け、安達氏が生垣に駆けつけてみると、そこには一匹の古狸がのびていました。
この古狸。
馬脚をあらわしました。
・馬脚=馬の足
・馬脚をあらわす=隠されていた本性が露わになる
・広瀬喜尚(ひろせきしょう・1761~1833・博識家)
・岩邑怪談録(がんゆうかいだんろく・岩国藩内の怪談録)




