670/917
670 機尋
機尋という妖怪がおります。
江戸時代中期、鳥山石燕の『今昔百鬼拾遺』にあり、機で織られた布が蛇の姿で描かれています。
その昔。
ある女房は怠け者の夫にかわって、夜遅くまで機織りをしていました。
ある日。
家に帰らなくなった夫を怨みながら機を織っていた女房でしたが、その怨みから織りかけの布を切ってしまいました。
やがて女房の恨みの念は切れた布に宿り、蛇の姿の機尋となって、夫の行方を探し始めました。
機尋は若い女と一緒にいる夫を見つけました。
夫が逃げ出します。
機尋は女に襲いかかりました。
ところが女は意外と力が強く、機尋は女の太い足で押さえつけられてしまいました。
この機尋。
手も足も出ませんでした。
・手も足も出ません=蛇の姿
・手も足も出ない=無力でどうすることもできない
・鳥山石燕(とりやませきえん・1712~1788・画家)
・『今昔百鬼拾遺』(こんじゃくひゃっきしゅうい)