666/919
666 油坊
油坊は怪火または亡霊で、滋賀県や京都府に伝承があり、これは油を盗んだ坊主が化けたものだといわれています。
滋賀県野洲市の伝承。
晩春から夏にかけて現れ、これは比叡山の灯油を盗んだ僧侶が化身したもので、江戸時代中期、菊岡沾涼の『諸国里人談』によれば、比叡山の西麓にも現れたとされています。
同県愛知郡愛荘町の金剛寺では、寺に灯油を届ける役目を持つ僧が、遊ぶ金欲しさに灯油を盗んでそれを売って金を作ったのですが、遊びに行く前に病気で急死してしまいました。
それ以来。
その僧の霊が寺の山門に現れ、道行く者に声をかけては、長々と世間話をするようになりました。
この油坊。
だれかれになく油を売りました。
・油を売る=むだ話などをして仕事を怠ける
・菊岡沾涼(きくおかせんりょう・1680~1747・俳人、作家)
・『諸国里人談』(しょこくりじんだん・1743年刊・奇談・怪談)




