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662 松明丸
松明丸は怪火の一種です。
江戸時代中期、鳥山石燕の妖怪画集『百器徒然袋』にあり、炎は猛禽類の鷲のような形で描かれ、解説によると、松明丸は天狗礫が発する光だとしています。
松明丸はその名前のとおり松明のような火なのですが、これは真夜中を照らす悪い火で、山にこもって修行をする僧は松明丸の出現を恐れました。
ある晩。
修行僧が修行をしていると、真っ暗な空から明るい炎が飛んできました。
炎が僧のそばに舞い降ります。
その炎は鳥の形をしており、鋭い爪とくちばしを持っていました。
僧が問います。
「おぬしか、松明丸というのは?」
炎の鳥は大きくうなずきました。
「そうだ、ワシだ」
・ワシ=わたし=鷲
・鳥山石燕(とりやませきえん・1712~1788・画家)
・『百器徒然袋』(ひゃっきつれづれぶくろ)




