659/924
659 鳴釜
鳴釜という妖怪がおります。
江戸時代中期、鳥山石燕の妖怪画集『百器徒然袋』にあり、細い体に真っ黒な毛を生やしたものが、頭に釜を逆さまにかぶり、竈の前で絵馬を拝む姿が描かれています。
鳴釜の由来そのものは、釜を焚くことで発生する音から吉凶を占う神事であり、これから石燕がこの妖怪を鳴釜と命名したと考えられています。
その昔。
某寺にあった鳴釜は天気を当て、湯を沸かすときに釜が泣くように鳴れば、その日は雨が降ったといいます。
ある日。
泣くように鳴っても、なぜか雨は降らず、鳴釜は天気を当てられなくなってしまいました。
鳴釜は住職に申し出ました。
「ここを出ることに」
「寺は別にカマワナイが」
・カマワナイ=釜はない=構わない
・鳥山石燕(とりやませきえん・1712~1788・画家)
・『百器徒然袋』(ひゃっきつれづれぶくろ)




