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645 火を吐く鳥
火を吐く鳥という妖怪がおります。
これは京都府亀岡市に伝承があり、『丹波の伝承』や『保津百景道しるべ』に次のようなことが記されています。
「保津川の保津小橋の辺りには、5月頃になると火を吐く鳥が出たといわれている。
この鳥は蛍狩りや魚採りをしている者のところへ飛んでくるのだが、ちょっかいを出すと耳元で鋭く一声鳴いて飛んでいった。
すると次の瞬間。
顔に熱湯をかけられたような感覚になり、目はくらんで何も見えず、しばらく意識を失ってしまうこともあるという」
これはかつて保津川に密漁者が多かったため、それを戒めるために生み出されたものであるともいわれています。
この火を吐く鳥。
誰もトリアワナカッタといいます。
・トリアワナカッタ=鳥遭わなかった=取り合わなかった
・『丹波の伝承』(田中勝雄著・1941年刊)
・『保津百景道しるべ』(2010年、保津町自治会発行)