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634 百足が耳に入りし人
百足が耳に入りし人は、江戸時代後期、森春樹の『蓬生談』に次のような話があります。
「肥前諫早の近在のことと聞く。
昼寝をしていた人の耳に、1寸ほどの百足が這い込んで出てこなくなった。
それからというもの耳の奥が痛み、やがて頭の骨まで痛みだしたので、さまざまな薬汁を入れて療治したが、百足は出ず痛みも去らず、20数年間苦しみ続けて死を迎えた。
死の間際。
その人は自分が死んだら頭を割り、仇の百足を殺せとかたく言い遺した。
父の遺言とあれば是非もない。
子供たちが父の頭を割ると、10寸近い大百足に成長しており、頭蓋骨を喰っていたという」
この百足。
長い間、頭蓋骨をコツコツ喰っていたのでした。
・コツコツ=骨骨=こつこつ
・こつこつ=たゆまず、地道に
・森春樹(もりはるき・1771~1834・国学者)
・『蓬生談』(ほうしょうだん・随筆)




