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630 流れ行燈
流れ行燈は大分県竹田市に伝承があり、その正体は不倫を責められて殺された女の幽霊で、かつて精霊流しの場には必ずといっていいほど現れたといわれています。
元禄時代。
盆の十五夜、精霊流しが終わった頃。
竹田の町を流れる稲葉川の上流から、青い火の怪しげな行燈がふらふらとゆっくり流れてきて、川の流れに逆らうように右に左にさまよい、川岸に何度も引っかかりながら下流へと流れていきました。
このとき。
行燈から寝衣姿の女が飛び出し、「わたしは殺された、うらめしい」とつぶやき、行燈に駆け上ったり水中に入ったりを繰り返したといいます。
この女の幽霊。
殺された怨みは、たやすく水に流すわけにはいかないのでした。
・水に流す=流れ行燈
・水に流す=過去にあったことをすべてなかったこととする
・元禄時代=1688~1704年。将軍は徳川綱吉の時代。