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622 舞首
舞首は神奈川県真鶴町に伝わる怨霊で、江戸時代後期、桃山人の『絵本百物語』に次のような話があります。
鎌倉時代。
伊豆の真鶴の祭の日。
小三太、又重、悪五郎という三人の武士は酒の勢いで口論となり、やがて刀の斬り合いとなりました。
悪五郎が小三太の首を斬り、さらに又重を斬ろうとしたところ、二人は海に転げ落ち、海中で二つの首が同時に斬り落とされました。
首だけになっても二人は水中で争い続け、又重の首が悪五郎の首に噛みつこうとしたとき、そこへ先に斬り落とされていた小三太の首がおどり出て、悪五郎の首に噛みつきました。
それ以来。
伊豆の海中では、三人の首が激しく争っているといいます。
舞首は今もキリキリ舞いです。
・キリキリ舞い=首を斬り=舞首
・キリキリ舞い=非常に忙しく立ち回ること
・桃山人(とうさんじん・1804~1844・戯作者)
・『絵本百物語』(1841年刊行・奇談集)