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608 五郎坂
五郎坂は昔話の一種で、大分県竹田市に次のような話が伝わっています。
江戸末期の頃。
竹田のババノオ坂の近くに、知恵、力ともに優れた五郎という若者が住んでいました。
あるとき。
五郎が庄屋の悪事を知ってとがめると、庄屋はそれに怒って五郎を恨み、自分の罪を五郎のせいにしたため、五郎は斬首の刑に処せられました。
母親は息子の死骸に取りすがり、「無念と思うなら、この坂を上り下りして見せろ」と泣き叫びました。
すると五郎の首が動き出し、坂を登るときは草木の根にかじりついて登り、下るときは転がりました。
その後。
この坂は五郎坂と呼ばれ、庄屋の一族は死に絶えたといいます。
この五郎坂。
すべて庄屋のサカウラミからでした。
・サカウラミ=坂恨み(さかうらみ)=逆怨み(さかうらみ)