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601 安達ヶ原の鬼婆
安達ヶ原の鬼婆は、福島県二本松市に次のような話が伝わっています。
その昔。
岩手という乳母がおりました。
あるとき奉公先の姫が病魔におかされ、これを治すには、妊婦の腹の中にある赤子の生き胆を飲ませるしかないといわれました。
岩手はこれを探して各地を旅し、やがて安達ヶ原に住みつきました。
ある晩。
妊婦が宿を求めてきたので、これ幸いと腹を割いて赤子を取り出しました。
妊婦は母を捜していることを告げ、岩手にお守りを渡して息絶えました。
岩手はそのお守りにより、妊婦が実の娘だと気づきました。
その後。
岩手は気が狂い、人の肉を食う鬼婆になりました。
この岩手。
殺した妊婦が実の娘だと知ってキモを潰したといいます。
・キモ=胆
・胆を潰す=大いに驚き恐れる