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594 野鎌
野鎌という妖怪がおります。
これは四国の各地に伝承があり、かつて遺体を埋葬する墓を造るときは鎌を使用していたのですが、その鎌は七日間ほど墓場に置いておくという習わしがあり、それを破ると妖怪の野鎌になるといわれていました。
野鎌はおもに野山に現れ、これに遭遇した者はわけもなくいきなり転び、そのときどこも痛くはないのですが、いつの間にか足に大きな切り傷ができていたといいます。
このとき次の呪文で、野鎌は消えてなくなったといいます。
「仏の左の下のおみあしの下の、くろたけの刈り株なり、痛うはなかれ、はやくろうたが、生え来さる」
意味は不明だといいますが、今もこの呪文でカマワナイといわれています。
・カマワナイ=構わない=鎌はない




