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590 ケンムン1
ケンムンという妖怪がおります。
鹿児島県の奄美群島に伝承があり、江戸時代末期、名越左源太著『南島雑話』に次のような話があります。
ケンムンは水の精である一方、木を棲み処としている木の精でもあり、海にも森にも現れました。
姿かたちは河童に似ていますが、見た相手の姿に変化したり、さらに姿を消すこともできました。
また夜になると発光し、それは涎が光るため、または指先に火を灯すためだいわれました。
これを避けるには、天敵の蛸を置いておくのがよいとされました。
昔、海にいた頃。
ケンムンは生活の場を蛸に追われ、海では食えなくなり、やむなく樹上生活にしました。
以来。
爪に火を灯す生活をしています。
・爪に火を灯す=指先に火を灯す
・爪に火を灯す=貧しくてつましい生活を送る
・名越左源太(なごやさげんた・1820~1881・幕末の薩摩藩士)
・『南島雑話』(なんとうざつわ・奄美大島の地誌)




