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586 蟹坊主
蟹坊主という妖怪がおります。
日本各地に伝承があり、蟹坊主は巨大な蟹の姿で無人の古寺などに出没したといいます。
この蟹坊主。
旅の僧などが廃寺に泊ると、そこへ現れて問答を仕掛け、相手が正解すれば消え、まちがえれば鋏を使って貪り喰ったといいます。
ある荒れ果てた寺。
ある旅の僧が宿をとっていると、そこに蟹坊主が現れました。
さっそく僧に謎かけをします。
「両足八足大足二足、横行自在にして、眼は天を差す。これ如何に?」
「突然、いかにと言われても……」
僧が首をかしげます。
「さあ、早く答えよ」
「いかにと言われ……」
「さあ、早く!」
「いカニ……」
「ふむっ」
蟹坊主は姿を消しました。
・いカニ=如何に=い蟹




