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585 煙々羅
煙々羅という妖怪がおります。
江戸時代中期、鳥山石燕の妖怪画集『今昔百鬼拾遺』にあり、立ち昇る煙の上部に、不気味な顔が浮かび上がったものが描かれています。
その解説文。
「しづが家の、いぶせき蚊遣の煙ふすぶれて、あやしきかたちをなせり……煙々羅とは名づけたらん」
煙々羅は石燕が名付けたといわれており、さらに煙の妖怪はほかに例がなく、これっといった民間伝承も見られないといいます。
吉田兼好の『徒然草』十九段には、「六月の頃あやしき家にゆふがほの白く見えて、蚊遣火ふすぶるもあはれなり」とあり、石燕がこれをもとに創作したのではないかと噂されています。
この話。
火のないところに煙は立ちません。
・火のないところに煙は立たたない=うわさが立つからには何らかの根拠があるはず
・鳥山石燕(とりやませきえん・1712~1788・画家)
・『今昔百鬼拾遺』(こんじゃくひゃっきしゅうい)
・吉田兼好=(1283~1352・歌人・随筆家)
・『徒然草』(つれづれぐさ・随筆)




