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576 金次郎狐
金次郎狐は化け狐の一種で、熊本県玉名郡南関町に次のような話が伝わっています。
その昔。
金次郎狐は鷹の原というところに棲んでいました。
村人が町で油揚げを買って帰る途中、この鷹の原の参道を通りかかると、金次郎狐はその村人を化かして油揚げを盗っていました。
あるとき。
百姓が荷物を肩にかけ、着物の尻をからげた奇妙なかっこうで、蕎麦畑の中を用心深そうに歩いていました。
それを見た百姓が「どうしたのか」と声をかけると、「この川は深いなあ」と言いながら、いかにも水中を歩くように歩いていきました。
そんなときはすぐ近くで、金次郎狐がニタリと笑っていたといいいます。
この金次郎狐。
ソバの畑で見ていたのでした。
・ソバ=蕎麦=傍




