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574 死人蘇生
死人蘇生は江戸時代中期、本島知辰の『月堂見聞集』に次のような話があります。
享保7年9月中旬。
京都四条油小路に住む女房が病気で亡くなったため、旦那寺の僧が来て入棺しようとしたところ、死人が突然蘇生してしゃべりました。
「小豆飯が食べたい」
そこで赤飯を与えると数杯をたいらげました。
女房が本当に生き返ったのかと、医師数人に診てもらいましたが、「まったく脈がない」と、みな一様に首をかしげました。
それでは邪気の仕業かと、山伏などが来て祈祷しましたが効き目がなく、食べ物を求めてやみませんでした。
万策尽きて放っておいたら、女房は3日ばかりして死んだといいます。
この女房。
生き返る脈は初めからなかったのでした。
・脈がない=希望が持てない。見込みがない
・享保七年=1722年
・本島知辰(もとじまもとたつ・詳細不明)
・『月堂見聞集』(げつどうけんもんしゅう・見聞雑録)




