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57 猫又1
猫又という妖怪がおります。
これは民間伝承、怪談、随筆など多くに登場し、猫が長生きをすると尻尾が二又に分かれ、この猫又になるといわれました。
猫又は美しい女に化け、出遭った人間をだまして喰うのですが、山奥深くに棲んでいるため、狙われるのはたいてい山で働く男たちでした。
その昔。
五助という木こりがおりました。
ある日のこと。
「ねえ、あたしと遊ばない?」
五助は山で美しい女に声をかけられました。
――こんな山奥に若い女がいるはずがない。
五助はすぐに猫又だと気がつきました。
山で美しい女に出遭ったら、それは猫又だと父親に教えられていたのです。
五助は首を振りました。
「わしは付き合ってる女がおる、フタマタは好かん」
・フタマタ=二又=二股
・二股=二人の恋人と同時交際する




