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567 新田の虫
新田の虫は、熊本県出身の牛島盛光編著『肥後の伝説』に次のような話があります。
その昔。
中原に庄屋の前田喜三衛門、半左衛門の兄弟がいて、この村は多くの新田が開かれ、次第に暮らし向きが楽になっていきました。
これを妬んだ他村の百姓が藩に訴え、藩も土地が肥えてきたことを理由に税を引き上げました。
そこで兄弟が藩に減税を願い出ると、反乱の首謀者として処刑されてしまい、このとき兄弟は「死後は虫となり、新田以外の作物を食い荒らす」と言い残しました。
すると翌年から害虫が発生し、それは新田以外の作物を食い荒らしたといいます。
この新田の虫。
捕まると死んだふりをしたといいます。
「この虫、シンデンのか?」
・シンデン=新田=死んでん
・牛島盛光(うしじまもりみつ・1921~2004・民俗学者)
・『肥後の伝説』(ひごのでんせつ・1976年刊)
 




