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563 鼠島
鼠島は江戸時代後期、橘南谿の『西遊記続編』に次のような話があります。
その昔。
肥後と天草の間の海に鼠島と呼ばれる小さな無人島があり、その島にはどういうわけか、昔からおびただしい数の鼠が棲んでいました。
この付近を通る船は、船頭が三味線を弾くことを固く禁止しており、それは三味線を弾くと必ず大きな波風が起こって、船が危険な目に遭遇するからだといいます。
これは三味線には猫の皮を張っているので、鼠がこれを嫌うためだといわれています。
ただ近年。
都の方では三味線に犬の皮を張ることが多く、この島の鼠はそのことを知らないのでした。
当時。
三味線に張られる皮は猫のものが上。
犬は下。
鼠はチュウでした。
・チュウ=鼠の鳴き声=中
・橘南谿(たちばななんけい・1753~1805・医者)
・『西遊記続編』(せいゆうきぞくへん・紀行、随筆)




