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560 煤け行灯
煤け行灯は石川県金沢市に伝わる怪火で、江戸時代中期、堀麦水著「三州奇談」に次のような話があります。
ある晩。
犬を連れた男が明神様の前を通ると、若い娘が煤けた行灯のそばで髪をすいていたのですが、その娘に犬がいきなり襲いかかっていきました。
驚いた男は家に戻り、これからのことを思案しているうち、不覚にも眠ってしまいました。
翌朝。
男が眼を覚ますと、明神様の前で若い娘が犬に噛み殺されたという話し声が聞こえてきました。
男は急いで明神様へ行きました。
やがて夜が明け陽がさすと、それまで娘だったものが古狸に姿を変えました。
このとき。
娘の正体が古狸とわかり、男はススケーアンドしたといいます。
・ススケーアンド=すげー安堵=煤け行灯
・堀麦水(ほりばくすい・1718~1783・俳人)
・『三州奇談』(さんしゆうきだん・加賀・能登・越中の奇談・怪談・珍談)
 




