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56 赤舌
赤舌という妖怪がおります。
江戸時代の妖怪絵巻に見られ、これは毛深い顔、爪のある手、開かれた口、大きな舌と、いかにも獣のような姿で描かれているのですが、その全身像は黒雲に覆われてよくわかりません。
ただひとつ。
鳥山石燕の『画図百鬼夜行』には、この赤舌が水門の上に描かれており、それが「舌は禍の門」に通じることから、赤舌とは一種の羅刹神であり、「口が開いている限り吉事には恵まれない」などと、様々な解釈が説かれるようになりました。
ですが……。
石燕の亡き現在、赤舌の絵には説明文が添えられてないため、それらの真意は不明のままで、今となっては何もわかりません。
死人に口なしです。
・死人に口なし=死人は無実の罪を着せられても釈明することができない。また、死人を証人に立てようとしても不可能である
・鳥山石燕(とりやませきえん・1712~1788・画家)
・羅刹=大力で足が速く、人を食うといわれる悪鬼。のちに仏教に入り守護神とされた




