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54 足洗邸
足洗邸は、江戸の本所を舞台とした「本所七不思議」の一つです。
江戸は本所三笠町に、味野という旗本の上屋敷がありました。
ある夜。
天井裏で大きな物音がしたのち、「足を洗え」という声が響き、巨大な足が天井板を突き破って降りてきました。
翌晩からもこの怪現象は続き、家人が降りてきた足を洗うと消えますが、洗わないと家じゅうの天井を踏み抜いて暴れました。
味野がたまりかねて同僚の旗本に相談したところ、同僚はたいそう興味を持ち、上意の許しを得て上屋敷を交換してくれました。
その後。
この上屋敷には同僚が移り住んだのですが、足はどこへ行ったのか二度と現れなかったといいます。
足が遠のいたのでした。
・足が遠のく=今までよく行っていた所に行かなくなる
・本所七不思議=本所(東京都墨田区)に江戸時代ころから伝承される奇談・怪談




