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527 蛇女房
蛇女房は異類婚姻譚で各地に伝わっています。
その昔。
ある男が蛇を助けたところ、その蛇が娘となって家を訪ねてきて一緒に暮らすようになりました。
やがて二人の間には男の子が生まれました。
ある日。
夫に正体を知られた女房は、なめれば乳の代わりとなる宝珠を我が子に与えると、蛇に戻って棲み処へと帰っていきました。
子供が宝珠をしゃぶり尽くして泣くと、蛇は残っていたもう一方の目を抜いて夫に渡しました。
宝珠は自分の目玉だったのです。
盲目となった蛇は夫に、寺へ釣鐘を奉納し、その鐘をついてくれと頼みました。
それ以来。
大蛇は鐘の音を聞いて、時と方角を知るようになったといいます。
この蛇女房。
我が子に目がありませんでした。
・目がない=盲目となった
・目がない=たまらなく好きである




