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526 おいで狐
おいで狐は化け狐の一種です。
東京都南千住の真崎稲荷神社の縁の下に棲んでいた狐で、この狐は神社にあった茶屋の老婆になついていて、老婆が油揚げを持って、「おいで、おいで」と呼ぶと縁の下から出てきたといい、またときおり茶屋の娘に憑いていたといいます。
寛政4年。
この狐が陸奥国松前へ帰ることになり、このとき世話になったお礼に形見を書き残したいと、老婆に申し出ました。
老婆が扇子を渡すと、「月は露 露は草葉に宿りけり それこそえんよ宮城野の原」と歌を書き、憑いていた娘から離れて松前へと去っていきました。
老婆が正気に戻った娘に扇子を見せて言いました。
「この歌を書いたの、おまえだよ」
「ウチワセンス」
・ウチワセンス=団扇扇子=うちはしてません
・寛政4年=1751年
 




