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522 悪棲
悪棲という妖怪がおります。
岡山県に伝承があり、これは吉備津国の穴海に棲んでいたという巨大な魚で、船をひと呑みにしたといわれています。
また『古事記』などに登場するヤマトタケルノミコトが、九州の熊襲討伐の帰りにこの悪樓と遭遇し、このとき暴れ狂う悪樓の背にまたがり、自慢の剣で退治したと伝えられています。
その際。
悪棲が二度と蘇ることのないよう、身体を八つ裂きにして別々の場所に葬ったといい、そのとき流れ出た血は三日三晩にわたって川を赤く染めたといわれています。
この伝承。
『記紀』には記述がなく、江戸末期から明治初期にかけての創作だと考えられています。
「悪棲、おまえは!」
「ウオっす!」
・ウオっす=魚っす=押忍
・押忍=挨拶の一つ
・『古事記』(こじき・712年完成・日本神話を含む歴史書)
・『記紀』(きき・『古事記』『日本書紀』の総称で、『古事記』の「記」と『日本書紀』の「紀」を併せて「記紀」という)




