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52 二口女1
二口女という妖怪がおります。
江戸時代後期、桃山人の奇談集『絵本百物語』に次のような話があります。
その昔。
某家に後妻が嫁ぎました。
そこには先妻の娘がいたのですが、後妻は自分の娘だけをかわいがり、先妻の子に食事をろくに与えず餓死させてしまいました。
四十九日後。
夫が薪を割っていたところ、振り上げた斧が過って後妻の後頭部を割ってしまいました。
その後、後頭部の傷口は唇のような形になり、頭蓋骨の一部は突き出して歯に、肉の一部は舌となり、そこから飯を食べるようになりました。
この傷口はいつまでも塞がることがなく、やがて恨み言をしゃべるようになりました。
この二口女。
減らず口を叩きました。
・減らず口=二口
・減らず口を叩く=負け惜しみや強がりの屁理屈を述べ立てる
・桃山人(とうさんじん・1804~1844・戯作者)
・『絵本百物語』(1841年刊行・奇談集)




