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516 磯天狗
磯天狗という妖怪がおります。
名前に天狗とありますが、これは一般的な天狗ではなく怪火のようなもので、愛知県半田市に次のような話が伝わっています。
尾張国のある村では、海上に小さな白煙が回転しながら現れ、それが次第に大きさを増し、竜巻のような凄まじい風とともに山へと飛び、また飛び去ってゆくものがあったのですが、村人たちはこれを磯天狗の仕業だと噂しました。
あるとき。
某男がこの噂の真意を確かめようと、磯天狗が飛来したという山へ登ったところ、噂どおりの竜巻のような白煙が飛来し、男はあっという間にその中に飲み込まれ、はるか遠くの海まで放り出されてしまいました。
この磯天狗。
火のない所に煙は立ちませんでした。
・火のない所に煙は立たない=噂が立つのは、その原因となる事実があるはずである




