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506 狸囃子
狸囃子は、江戸の本所を舞台とした「本所七不思議」の一つです。
これは笛や太鼓などの音の怪異の一種で、この囃子に浮かれて音がする方へ散策に出ても、音は逃げるように遠ざかっていき、気がつくと見たこともない場所にいるといいます。
江戸時代の頃。
肥前国平戸藩主の松浦清も、江戸勤めの折にこの囃子の怪異に遭遇しました。
このとき松浦は、家来に命じて囃子の所在を探索させたのですが、噂どおり狸のしわざなのか、囃子の音は割下水付近で消えたといいます。
その後。
松浦自らが笛や太鼓を打ち鳴らし、幾度となく狸をおびき出そうとしましたが、狸は一度たりとも正体を現すことがなかったそうです。
笛吹けど踊らずでした。
・笛吹けど踊らず=いろいろと手を尽くしても、まるで反応がないことのたとえ
・本所七不思議=本所(東京都墨田区)に江戸時代ころから伝承される奇談・怪談




