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505 悪路神の火
悪路神の火は江戸時代後期、為永春水の随筆『閑窓瑣談』に次のような話があります。
その昔。
伊勢の猪草が淵には丸木橋があり、それは幅18メートルほどの川に架かっていたのですが、そのあたりには山蛭が多くいる難所でした。
悪路神の火はこの橋の付近に出没していて、雨の降る夜は特に多く現れ、誰かが提灯を灯して橋を渡っているかのようだったといいます。
この悪路神の火に出遭った者は身を隠すように素早く地面に伏せるのがよく、うっかり近づいたりすると病気になってしまいました。
やがてこの火は川を渡っていってしまうので、そうなればもう危険はありません。
この悪路神の火。
最後は対岸の火となりました。
・対岸の火=自分には関係がなく何の苦痛もないこと
・為永 春水(ためながしゅんすい・1790~1843・戯作者)
・閑窻瑣談(かんそうさだん・随筆)




