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503 黒手
黒手という妖怪がおります。
石川県金沢市に伝承があり、江戸時代中期、浅香山井の随筆『四不語録』に次のような話があります。
慶長年間のこと。
ある男の家の厠で、女房が何者かに尻をなでられるということがあり、男が待ちかまえていると、厠に毛むくじゃらの手が現れました。
男は刀で手を切り落としました。
数日後。
旅の僧が訪れ、「これは我が手だ!」と言って、その手を自分の腕につけようとしました。
ですが元どおりにはなりません。
すると僧は9尺もの化け物に化身し、衾のようなものを舞わせました。
男は気を失い、やがて気がつくと、化け物も手も消えていました。
その後、化け物は二度と現れませんでした。
手が切れました。
・手が切れる=縁が切れる
・9尺=2.7メートル
・慶長年間=1596年~1615年
・浅香山井(詳細不詳)
・『四不語録』(しふごろく・随筆)




