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502 乳の親
乳の親という妖怪がおります。
乳の親は「ちーのうや」と読み、乳房の大きな優しい顔立ちの女で、沖縄県に次のような話が伝わっています。
ある村でのこと。
素性の知れない洗い髪の女が赤子を抱いて、ときおり村に菓子を買いにきていました。
その頃。
村はずれからよく赤子の泣き声が聞こえていたのですが、その女が村にいるときだけは、赤子の泣き声が聞こえませんでした。
村の者たちはいつも、そのことを不思議に思っていました。
ある日。
村はずれの墓で赤子の泣き声がするので、村人らがその墓を開けてみたところ、乳を欲しがって泣いている赤子がいました。
あたりに母らしき姿はありません。
父の姿もありません。
この赤子。
チチなし子でした。
・チチ=父=乳




