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500 大蜘蛛
大蜘蛛は怪異の一種です。
江戸時代後期、井出道貞の地誌『信濃奇勝録』に次のような話があります。
某村に母と幼い子が暮らしていたのですが、あるととき、子供が「クモが来る、クモが来る」と、うなされるようになりました。
母親は奇異に思い祈祷をあげてもらいますが、子供はいっこうに回復しませんでした。
ある夜。
大蜘蛛が母親の前にも姿を現し、母親の悲鳴を聞いた村人らが、鍬や鎌などを手に駆けつけてきました。
大蜘蛛が逃げ出します。
村人らがあとを追うと、不思議なことに煙のように消えてしまいました。
その後、大蜘蛛は現れることはなく、またその姿を見た村人もいませんでした。
この大蜘蛛。
クモガクレをしました。
・クモガクレ=蜘蛛ガクレ=雲隠れ
・雲隠れ=行方をくらます
・井出道貞(いでみちさだ・1756~1839・地方史家、俳人)
・『信濃奇勝録』(しなのきしようろく・信濃の歴史、地誌)




