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50 三途の川
三途の川は現世の此岸と、あの世の彼岸の境にあるとされる川のことです。
三途川の出典は、大乗経典のひとつ『金光明経』の「この経、よく地獄餓鬼畜生の諸河をして焦乾枯渇せしむ」であり、地獄、餓鬼、畜生を三途といい、これが三悪道を指して三途の川とされているといいます。
その昔。
一人の娘がおりました。
娘は好きな男が別の女と一緒になり、それをひがんで我が身を儚み、自らの命を断ちました。
初盆の日。
親によって迎え火が焚かれ、胡瓜の馬が三途の川を渡って娘を迎えに行きました。
ですが……。
娘は迎えの馬に乗ることを強く拒みました。
馬だけが此岸に帰っていきます。
娘はずっとヒガンでいました。
・ヒガンでいる=彼岸にいる=ゆがんだ考え方をする
・『金光明経』4世紀頃に成立したとみられる仏教仏典




