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493 蒟蒻坊
蒟蒻坊という妖怪がおります。
これは古い蒟蒻玉が化けたもので、和歌山県に次のような話が伝わっています。
その昔。
ある寺に旅の僧が宿を求めてきました。
「長旅でお疲れでしょう」
寺の者は風呂を勧めました。
「風呂には灰が入ってないだろうね?」
旅の僧が何度もたずねます。
寺の者がこれを奇妙に思いながらも風呂に案内すると、旅の僧はたいそう喜び、しばらくの滞在を願い出ました。
その後。
旅の僧が毎度、灰が入っていなか確認するので、ある日、寺の者はこっそり湯に灰を入れてみました。
すると旅の僧は、風呂の中で大きな蒟蒻になっていました。
蒟蒻坊が寺の者に問います。
「風呂に何か入れなかったかね?」
「ハイ」
・ハイ=はい(返事)=灰




