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492 寺つつき
寺つつきという妖怪がおります。
江戸時代中期、鳥山石燕の妖怪図画『今昔画図続百鬼』にあり、これはキツツキに似た怪鳥で、四天王寺や法隆寺に入り込み、鋭いくちばしで寺を突き壊そうとしたといいます。
鎌倉時代の『源平盛衰記』には、聖徳太子自らが鷹に化身して追い払ったと記されています。
この妖怪は日本古来の神を信仰していた物部守屋の怨霊であり、守屋が死してなお仏法に逆らい、聖徳太子の建立した寺を壊そうとしたのだと伝えられています。
当時。
物部氏は強硬な廃仏派でした。
中でも特に守屋は、崇仏派の曽我氏と激しく対立していました。
こと仏教となると……。
死んでもホットケなかったのでした。
・ホットケなかった=仏なかった=放っておけなかった
・聖徳太子(しょうとくたいし・574~622)
・物部守屋(もののべのもりや・?~587・大和時代の有力豪族)
・鳥山石燕(とりやませきえん・1712~1788・画家)
・『今昔画図続百鬼』(こんじゃくがずぞくひゃっき)
・『源平盛衰記』(鎌倉時代の軍記物語)




