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486 麻姑
麻姑は元は中国の仙女で、井原西鶴の『西鶴諸国ばなし』に次のような話があります。
その昔。
金沢に流円坊という僧がいたのですが、彼は海辺の庵で何の蓄えもない質素な生活を送っていました。
ある日。
流円坊は海岸で、全身が毛に覆われ、長い爪と耳を持った奇妙な獣二匹と遭遇しました。
一匹は流木を抱え、もう一匹は干魚を持って、それらを流円坊にくれました。
流円坊はこの心遣いを嬉しく思い、精進を破って干魚を食べてしまいました。
その後。
流円坊が寂しさを覚えると、麻姑は庵にやってくるようになり、このとき体の痒い所を自然に察し、長い爪のある手で思いのままに掻いてくれました。
この麻姑の手。
マゴの手になりました。
・マゴの手=麻姑の手=孫の手
・井原西鶴(いはらさいかく・1642~1693・浮世草子、人形浄瑠璃作者)
・『西鶴諸国ばなし』(さいかくしょこくばなし・浮世草子)




