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485 インモラ
インモラは宮城県仙台市出身の小説家、山田野理夫の『東北怪談の旅』に次のような話があります。
その昔。
長い間、住職がいなかった出羽国尾花沢の某寺に、本山から僧がやってきました。
村人はこの僧を手厚くもてなして迎えました。
ところがこの僧はずいぶんと怠け者で、朝夕の勤めはいい加減にすませ、ある老婆が亡くなったときも短い経をあげ、早々と帰ってしまいました。
寺に帰った僧が酒を飲んで寝ると、そこへ大きな鳥が現れて寺の中を飛びまわりました。
これはインモラといって、経を怠る僧のもとに現れるもので、バタバタと羽ばたきの音を立てるだけで、無視すれば害はなかったといいます。
このインモラ。
トリアワナイのが一番でした。
・トリアワナイ=取り合わない=鳥遭わない
・山田野理夫(やまだのりお・1922~2012・小説家、詩人)
・『東北怪談の旅』(1974年刊行・怪談集)




