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482 僧となった蛸
僧となった蛸は江戸時代後期、阿部正信の『駿国雑志』に次のような話があります。
「古い歴史のある清見寺は駿河国庵原郡にあり、この寺の開基である関聖上人はそもそも海中の蛸だった。
はるか昔。
海から大きな蛸が上陸して、天台宗の寺の僧が読誦していた経を聴聞した。
大蛸は6メートルあまりもあり、これに恐れおののいた村人は櫓や櫂でもって叩き殺し、死骸を近くの山に埋めた。
数年後。
蛸の埋められた所に野草がはえ、それを村の海女が摘んで食べたところ、やがて懐妊して男児が生まれた。
この男児は7歳のとき出家し、成長した後、僧となって清見寺を開いたのだという」
この僧となった蛸。
人知れずソーっとなりました。
・ソーっと=そぅーと=僧と
・櫓=和船をこぎ進める用具
・櫂=船を人力で進めるための棒状の船具
・阿部正信(あべまさのぶ・生没年不詳・江戸時代後期の旗本)
・『駿国雑志』(すんごくざっし・駿河国の地誌)
 




