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480 蝶となった屍
蝶となった屍は怪異の一種で、これは江戸時代中期、作者不詳の『大和怪異記』に次のような話があります。
「会津の某家の下女が朝食の飯を焚いていて、ふと笑い出し、そのあと笑い叫んだ末に失神し、そのまま死んでしまった。
下女は火葬されたのだが、遺体に火が回ったとき鉄砲のごとき音が鳴って、火が消えると同時に小さな蝶が幾千万となく飛び出して、それが四方に散っていった。
あとには骨一つ残っておらず、死骸が蝶になったのかと、みなこの出来事に茫然とした。
その後。
信州高遠の月岡宗二という人の元に、縁者が蝶の干からびたものを二つ持ってきたという」
このとき。
縁者は悔しそうに語ったそうです。
「シカバネエべ」
・シカバネエ=屍ねえ=しかたねえ
・『大和怪異記』(作者不詳・1709年成立・怪談集)




