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48 一つ目狸
一つ目狸は化け狸の一種です。
和歌山県西牟婁郡上富田町に伝承があり、目を大きく見開いて見せることで人を驚かせたといいます。
ある夜。
一つ目狸は一目坂の道端の茂みに隠れ、顔いっぱいに目を見開いて、旅人の前に飛び出しました。
旅人が驚いて転がるように逃げていきます。
このあと。
そこへ杖をついた男がやってました。
一つ目狸は男の前に飛び出すと、これまた目を大きく見開いて見せました。
ですが、男は少しも動じません。
座頭で目が見えなかったのです。
そうとも知らず、一つ目狸がむきになって目玉を膨らませていたところ、目玉が顔からはみ出て落ちてしまいました。
それ以来。
座頭にはイチモク置くようになったといいます。
・イチモク=一つ目=一目
・一目置く=自分より相手が優れていると認める




