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478 機巧
機巧は「細工」や「からくり」のことで、江戸時代後期、菅茶山著『筆のすさび』に次のような話があります。
その昔。
備前岡山の表具師で幸吉という者は、鳩の体重と羽の長さを計り、自分に適する翼を造って飛行しました。
ある夜。
空を飛んでいる途中、野原で行われている宴会を見て降下したところ、揚力を失い墜落してしまいました。
みなが驚いて逃げ去ったあとには大量の酒肴が残されていたので、それらを飲み食いした幸吉でしたが、地面から飛び上がれず、翼をたたんで歩いて帰りました。
その後。
幸吉は町奉行に呼び出され、翼を取り上げられたうえ、町から追放されました。
この機巧。
町奉行からヒコウとの沙汰を受けたのでした。
・ヒコウ=飛行=非行
・表具=布や紙などを張ることによって仕立てられた巻物、掛軸、屏風、襖、衝立、額、画帖など
・菅茶山(かんちゃざん・1748~1827・儒学者、漢詩人)
・『筆のすさび』(ふでのすさび・随筆)




