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475 赤子の怪1
赤子の怪は明治時代、作者不詳の妖怪絵巻『ばけもの絵巻』に次のような話があります。
その昔。
某場所に化物屋敷と呼ばれて、誰も寄りつかない家がありました。
あるときその家に、剣術者の男が化け物の正体を見極めようと泊り込みました。
深夜のこと。
障子の向こうからバタバタと誰かが踊っているような音が聞こえてきたことから、男がそっとのぞいて見ると、生まれたばかりの赤ん坊のようなものが踊っており、しかもそれらはどんどん数を増し、ついには数百人に達しました。
剣術者は赤子の化け物を斬り払おうと、太刀に手をかけたものの足がすくみ、その場から一歩も動けませんでした。
この剣術者。
赤子を前にしてタチスクミました。
・タチスクミ=太刀すくみ=立ちすくみ
・『ばけもの絵巻』=(作者不詳・全12話が収録)




